2022年1月19日「街角ピアノ 弘前」感想
NHKの街角ピアノという番組で、以前、地元の弘前が取り上げられた。その再放送を録画していたものを、2週間前くらいに見た。その感想を、なぜか今日書く。
街角ピアノは、駅や空港などに設置されているピアノを行き交う人が弾いているのを流しつつ、どうしてその曲を弾いたのかとか、どうしてピアノを弾いているのかとか軽くインタビューをする、ドキュメンタリーのようなタッチの番組だ。
その番組が、ぼくの地元弘前を取り上げたのでうれしい気持ちで見た。
まず、最後に弾いたおじさん(60歳代)が、めちゃくちゃ良かった。作曲家ということで、弘前には息子と旅行に来たということで、若い頃にバーでよく弾いたというペドロ&カプリシャス「五番街のマリーへ」をジャズのように弾いた。
キース・ジャレットの『The Melody At Night, with You』を彷彿とするような美しく感傷的な演奏だった。
ペドロ&カプリシャス「五番街のマリーへ」のオリジナルを聞いたことはなかったので、あとで聞いてみたところ、いかにも古い日本のポップスという感じがして、拍子抜けしてしまった。断然、作曲家のおじさんが弾いたピアノの「五番街のマリーへ」のほうがカッコいいし心に沁みた。おじさんは飄々と軽々と、クールに弾いていたのだけど、十分に音に情感が宿っていて、カッコよかった。
それから、最後の前に弾いた高校生の女の子のバッハ「トッカータ」が超絶上手くてすごかった。この収録の2週間後とかに、東京のコンクールで弾く曲ということだった。
夢はピアニストだけど、ピアニストの世界で生き残るのは難しいから、自分だけの音楽を追求したい、というようなことを女の子は言っていた。
夢を見ているわけでもなく、自分の実力を客観視して受容して、かつ自分がどう有りたいかを明確にしていて、高校生なのにすごいなあと平伏した。
もう一つ印象深かったのは、ネガティブな感想になるのだが、ベートーヴェンのピアノソナタ月光の第1楽章を弾いていた大学生の男性が、夜の駅で悦に浸って弾いていたのが、申し訳ないですが、なんかよくなかったです。すみません。
やっぱり作曲家のおじさんのように、クールに弾くのがいいと思います!!!(えらそうにすみません)
ちなみにぼくも、もしもピアノが弾けたなら、バッハの平均律第一巻の前奏曲ハ短調を駅で弾いてみたい。
ピアノの音色は古びないのがいい。ペドロ&カプリシャス「五番街のマリーへ」のように、ポップスは宿命的に古びていく。レコーディングの仕方とか、歌い方とか、なにが古くなるのか分からないけど、とにかくどんなにカッコいい音でも、必ず古くなる。
ビートルズでもニール・ヤングでもレッド・ツェッペリンでも、昔の音楽だということが感覚的に分かる。
食べ物や生物などの有機物のように、時間が経つと形を崩していくように古くなるのだ。もちろん、古いから駄目というのではない。ただ単に古いということが分かるという。
ポップスは音楽形態として、流行り物に過ぎないなと思う。一方で、時代と密接にリンクする分、ノスタルジーを喚起するものでもあると思う。青春時代によく聞いたポップスは、その個人の中で、永遠にメロディーが流れている。ポップスのそんなところが素敵だ。
結論は特にないけどそろそろシャワーを浴びて寝ないといけないので終わります。